ヨーロッパの中心にあるスイスは、小国ながら言語、文化、風景など実に複雑な多様性を誇っています。そして、それは名産であるワインにもいえること。日本の九州ほどの広さの国土で栽培されている葡萄は約250種類にものぼり、国土に対する葡萄の栽培比率は世界トップといわれています。
スイスワインの年間生産量は1億4800万本。そのうち輸出に回るのは、全体の1.5%に相当するわずか222万本(2019年時点)です。ほとんどの品種は生産量が非常に少なく、また産地でしか流通しない銘柄が多いことから輸出量も少なく、世界的にみても極めて稀少なワインとなっています。
国土の大部分が山と湖に覆われ、平地の少ないスイスでは、日当たりの良い山の斜面や日光が反射する湖のそば、昼間に熱を吸収し夜に放出する石垣の熱など、土地の特性を最大限に活かした棚田のような小さな単位の畑で、何世紀も変わらないワイン造りが行われています。スイスのワインづくりは紀元前ケルト時代まで遡ることができ、地域やコミュニティの歴史、伝統、土壌、気候の特徴を反映しながら何世紀も受け継がれてきたものです。そうしたスイスのワインの歴史や文化の一端を垣間見ることができるワイン祭りは、2016年にユネスコの無形文化遺産に登録されています。
我々は、スイスの地に根ざした伝統の味を守り伝えていくことはサスティナブルな取り組みだと考えています。
スイスの代表的な品種は、白のシャスラと赤のピノ・ノワール、ガメイ、メルローが全体の7割を占めています。なかでも注目されているのが〝シャスラ〞で造られる良質な辛口白ワインです。シャスラはスイスがシェアの8割を占める白ぶどう品種で、世界で最も古い品種のひとつともいわれています。
シャスラの栽培とワイン醸造が最も盛んなのは、国の西側「スイス・ロマンド」。中でも有名なのは、Vaund(ヴォー)州にあるLavaux(ラヴォー)やLa Côte(ラ・コート)と呼ばれるエリアです。特に2007年に世界文化遺産に登録されたラヴォーのぶどう畑の景観は息をのむほどに美しく、ラヴォーのシャスラはより稀少価値が高い、手に入りにくいワインです。
昨今、スイスでは有機栽培のブドウを使ったオーガニックワインの人気が高まり、更なる拡大が見込まれています。またラヴォーの一部のワイナリーでは、有機基準の保護剤を使用することで、環境に最大限配慮した農法を実践し、サスティナブルに結びつけています。
シャスラは、辛口でクセが少なく、お寿司をはじめ日本食にとてもよく合います。両国の文化の融合を示すスイスワインと日本食のマリアージュをぜひお楽しみください。